Ｂｏｙ Ｍｅｅｔｓ Ｇｉｒｌ
−オパーサの浜で、ぼくは一人の少女と出会った−
| オパーサの浜で出会った少女。金色に輝く髪を潮風に遊ばせ、沖に浮かぶ天龍の島を見つめていた。その後ろ姿を眼にした途端に、何故か高鳴るぼくの胸。 ぼくの気配に気付いたのか、少女がゆっくりと振り返る。顔には優しげな微笑をたたえて。 |
一瞬、凍りつく時間。
| 晴天の海の色を映したような、明るい蒼い瞳。端をわずかに上げた、薄く紅い唇。ぼくに向かって差し出された、その手。 |
強烈な既視感（デ・ジャ・ヴ）。
この情景も、この空気も、この想いまでも−。
| 幾度となく繰り返された情景。確かにぼくは、以前、彼女に会った。 ぼくの中に流れ込んでくる記憶。幾百の、幾千の、幾万の記憶。 出会って、別れて、擦れ違う。 幾百の切なさ。幾千の想い出。幾万の想い。 全てが一時（いっとき）にぼくを襲い、ぼくはめまいを覚える。 |
| 差し出された少女の手が、まるで命綱のようで、ぼくはその手にすがりつく。少し驚いたように見開かれた少女の眼は、すぐにまた細められ、少女はぼくに笑い掛けた。 −こんにちは。 その声までもなんだか懐かしくて、ぼくはすぐには声が出せない。 −この近くの人？ 少女が重ねて訊ねる。 「…ああ…。」 やっと発せられたぼくの声。そして、握ったままだった少女の手を慌てて放す。少女がクスリと笑う。 −なんて名前？きいていい？ 「セルジュ…。」 −セルジュ……。あなた、セルジュっていうの……。 少女は何かを確かめるように、少しうつむく。伏せられた瞼。まつげが長い。不意に顔を上げて、少女はニッコリと笑った。 −私はサラ。…サラ・キッド・ジール。 サラ・キッド・ジール。その名が、符号のように、ぼくの中の何かを開いた。ぼくの中の何かが、見る間にふくらみ弾け出す。ビック・バンのように！ −私、大切なものを探しに来たの。ずっとずっと昔、ここに忘れ物をしたのよ。 曖昧な笑みを浮かべ、ぼくは黙って頷く。ぼくは手を差し出した。その手を握りかえして、少女も頷く。 −それは、あなただったのね。セルジュ…。 全てが、今、この時のためにあった。 「キッド…。」 ぼくはその名を呟く。少女がもう一度、微笑んで頷く。 幾度擦れ違ったことだろう。幾度出会い、別れただろう。幾つの夏を共に過ごし、幾度再会を約束したのか。幾つの四季を、ぼくは過ごしただろう。君のいない秋、君のいない冬、君のいない春、そして再び巡りくる、君のいない夏。 −"いつの時代、どんな世界で生きてようと、会いに行くから……。" 「そして、君はここへ来てくれた。」 約束だから。それが君とぼくとの。いつかきっと再び出会い、共に生きる約束。巡る季節を、共に過ごす約束。 |
| ひと夏の想い出を越えて、今、初めて僕たちの季節が巡る。君のいる秋、君と過ごす冬、君と迎える春。君とぼくとの時間が、今、やっと始まる。君とぼくとの、新しい物語を紡ぐために。 |
会いに行くからさ世界中さがしても・・・・
いつかきっと・・・・・・
きっと・・・・・・
ＦＩＮ．
作品解説（言い訳） やってしまいました・・・。 |