ピエール勇者への道　リローデッド

日曜の昼下がり、キッドは自宅の窓辺でコーヒーを飲んでいた。
「暇だな…」
と、窓の外を眺めていると、突然持っていたコーヒーカップの中から小さなピエールがザッパーン！と現れ、言いました。
「スプラーッシュ！」
「帰れ」
スプーンでコーヒーの中にピエールを押し戻すキッド。
「いや・・・ちょ、ちょっと待たれよ！我は偉大なるコーヒーの神であるぞ、間違ってもピエールではない。分かったか愚民ども・・・ってあ、な、流しに捨てるのは勘弁してください！なんでも願いを叶えますから！」
流しの三角コーナー（生ゴミ）の上でカップを止めるキッド。
「なんでも？」
「ええそうです！マドナルドでも吉野屋でもスカイラークでも」
フッ、と鼻で笑い、何のためらいもなくカップを傾ける。
「ああ嘘です嘘です！なんなりと申して下さい！！」
泣きそうな顔で必死に懇願するピエール、もといコーヒーの神。
「じゃあ昔おとぎ話の本で見た遠い異国、アメリカイギリスフランスとゆーところに行ってみたい」
「ふっふっふ、お安い御用デース！草津でも別府でも湯布院でも楽々行けマ－ス」
「………なんかランクが著しく下がった気がするんだが」
しかしピエールはカップの中で明後日の方向を向いている。
「まあいいか、とにかく連れてってくれ」
「わかりましたー！それではまず、外に出て下さい！」
「出なきゃいけないのか？」
「そうデース！」
だんだんピエールの地の喋りになってきたのが気になったが、とにかく玄関へ向かい、戸を開けた。
「出たぞ」
「では、そこの角を右に曲がってくだサーイ」
いぶかし気な顔をしながらも、とりあえず言われた通り進む。
「はいそこは左！」
徐々に港が見えてきた。
「ではそこのボートに乗って下サーイ！」
「なあ……まさかこれで地力で行けってんじゃねえよな？」
「その通りデース」
アッサリ言い切った。キッドは無言で元来た道を戻った。家の戸を開けた。トイレの戸も開けた。コーヒーを流し込んだ。
「あ、っちょ、ちょっと待って下さい！！」
「問答無用！」
スイッチを押した。ジャー！と水が。
「あーーーウォッシュレットぉぉぉぉぉーーーーー………」
流れていった。

終わり。

2003/11/26