| 黒き風〜スワン〜 ２ |
| 「隊長…らしくないですね…」 イシトの執務室を所用で訪ねた"１（アイン）"が、帰り際、まるで何かのついでのように呟いた。 「ん？ マクセラのことか？」 部下の中でも最も長い付き合いの"１"の言葉に、イシトが苦笑する。 「仕方がないだろう？ 国防総省で手柄を立てて、昇進する代わりに"黒き風"入りを希望したって言うんだから…おまけに、うちの紅一点"４（フィーア）"も、いずれ近い内に情報管理センター辺りに転属する事になるだろうから、他に女性の隊員も必要だろうと、その辺をつつかれたんでな」 イシトはフッと溜息をついた。部下の紅一点"４"が、同じく部下の"５（フュンフ）"と恋仲なのはすでに周知の事実である。いずれ２人は結婚することになるだろう。そうなれば、危険この上ないこの「黒き風」に、いつまでも"４"を所属させておくわけにはいかない。信頼できる部下を失うのは残念だが、イシトは、部下の個人としての幸せを願ってもいた。 「隊に、女性はやはり必要かな…？ 私が入隊した頃は、ここは男所帯だったものだが…」 イシトは机に頬杖をついて独り言のように言った。"１"が笑った。 「自分もですよ、男所帯！ 今は当たり前のように"４"がいますが、思えば彼女が特例的に入隊したんでしたからね…必要かって言われると、どうなんでしょう…確かに"４"は良い仕事をしたと思いますが、彼女が入隊した当時の隊長が、下心付きで入れたって話もありますしね…」 イシトが慌てて姿勢を正した。 「私には下心など無いぞ！」 "１"が目を丸くし、それからケタケタと笑う。 「判ってますよ！ 当たり前じゃありませんか！ それに、隊長が"４"をどんなに大事に扱ってたか、自分には判ってますよ。決して"女だから"という任務は与えなかった。よく判ってるつもりです。"４"もそれに良く応えた…"４"はどうしても紅一点という言われ方をしますが、それ以前に、とても良い隊員だと思いますよ」 イシトは少し照れたような、だが、満足げな笑顔を"１"に向けて頷いた。 「それじゃあ、私が何を考えているか、判っているな？」 "１"はニッコリと笑った。 「うまいこと、断る気なんですね？」 「ああ。マクセラには悪いが、あえて女性だからと入隊させる気にはなれない」 "１"がちょっと意地悪な笑みを浮かべた。 「でも、３ヶ月の間に、手柄を立てたらどうします？ "４"に勝るとも劣らない軍人だったら？」 イシトが苦笑した。 「君は意外と意地が悪いな、"１"。まあ、そうなったら改めて考えるが…」 イシトは言葉を切って、ちょっと目を伏せて笑った。 「そうなっては困るので、君にも協力して貰いたいわけだ…あ、"２"には言うなよ！ あいつに言うと、絶対反対するに決まってるからな！」 "１"も笑って、大袈裟に敬礼をして答えた。 「了解！ トップシークレットですね！」 〜続く〜 |
| ちょっと言い訳 えっと・・・ごめんねmaxellさん。隊長に意地悪言わせて・・・(^_^; で、余談ですが、私、”１”君好きなんです。隊長の良き理解者で。 2001.1.6 |
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