「まだ、はっきりしたわけじゃない。だが、こないだのマクミランの計画では、極右の動きに連動して、ウシリスで反乱が起きるはずだった。そして、ラナケスは軍事介入。そのために、ラナケスがマクミランを通じて”解放戦線”を援助していた可能性はある。その援助の継続が欲しければ・・・。」

「こいつ等には、バックにいるのがラナケスだって事が判ってないって訳かな？」

「大国ラナケスだ。その辺は抜かりなくやってるさ。」

「じゃあ、マクミランは、こいつ等にとっては大事な人間だって事だな。」

その時、司令部からの直通内線電話が鳴った。

「はい、”黒き風”。え？はい。はい。・・・判りました。すぐ、そちらへ伺います！」

電話をとった”１（アイン）”が叫んだ。

「要求が来た！予想通りだ。マクミランと交換したいそうだ。」

「隊長に知らせよう！」

「せっかく今、休んだばかりだ。俺が代わりに司令部に行って来る。どうせ”複雑な外交問題”とやらで、すぐには動けないに決まってるんだ。今のうちに、少しでも休んでいただこう。みんなは、いつでも出られるように用意だけはしといてくれ。」

「・・・そうだな。ほんとに隊長、見てられなかった。ウシリスの奴ら、国賓でいる間は何かあったら困るから、救出に行くなら、一旦帰国してからにしろってぬかしたんだってよっ。あんなに辛そうな隊長は、初めて見たよ・・・。あ、いや、”５（フュンフ）”も、みんな、辛いのは一緒だよな。でも、自分のせいだと思ってる分、隊長がどんなに苦しいかと思って・・・。」

”６（ゼクス）”の言葉に、皆、黙り込んだ。

　イシトは夢を見ていた。いつも気丈な”４（フィーア）”。自分に、遠慮なく意見する”４”。最後に自分と並んで踊った、薄緑のドレスが美しい”４”。音楽に合わせて揺れていた彼女の髪。伏せられた長い睫毛。爆音。足下を赤く染めた血の色。覆面の男達が彼女を取り囲む。駄目だ。やめろ。”４”に触るな。彼女は、私の大事な・・・。

「駄目だ！”４”！」

イシトは叫んで、医務室のベッドで目を覚ました。”３（ドライ）”が心配そうに覗き込んでいる。

「・・・私は、随分眠ったのか・・・？」

まだ、夢の名残の動悸を感じながら、イシトは”３”に訊ねた。

「いえ、３時間ほどです。・・・あまりお休みになれなかったようですね・・。うなされていましたから。あ、要求が来ました。”４”とマクミランを交換したいそうです。」

「マクミランと！？どういうことだ？」

イシトは驚いて、ベッドに起きあがった。